長野県松本市の最奥、奈川地区の静かな山あいに、元・製材所を再生した小さなパン屋さんがあります。店名はそのまま「製材所のパン屋」。木の香りが残る建物に石窯の熱が宿り、窓の向こうには山の稜線。
観光目当ての立ち寄りにも、地元の“日常のパン屋”としても心地よい距離感です。運営しているのは、地域出身の向井亜紀子さんと向井圭子さん姉妹。親子三代の歴史を受け継ぎながら、新しい物語を紡いでいます。
製材所のパン屋さんの店舗情報とアクセス方法
最後に、実際に訪れるために必要な情報をまとめます。山間部に位置しているため、事前にルートを確認しておくと安心です。
住所・営業時間・営業日
- 住所は長野県松本市奈川3904-1
- 営業日は金・土・日曜日
- 営業時間は午前9時30分から18時まで
- 電話(0263-79-2212)
- メール(mukaik@azm.janis.or.jp)
ただしパンは人気商品のため、売り切れ次第終了となります。遠方から訪れる際には、早めの時間に到着するのがおすすめです。
オンリーワンなパン屋さん! パイナップル食パンとあんバターフランスパン、栗ちょこカンパーニュを購入しましたが、美味しかったです。 仙洛という蕎麦屋に行く途中で寄ったのですが、本当、ここも寄って良かったです。 いい旅の思い出になりました!
グーグルマップの口コミより
ひさびさに好みのパン屋さん出会えました。 塩バターフランスパンを購入 丸くておっきなパンです 見た目はもさっとしてますが、バターの風味がしっかりして焼かなくてもふわふわしっとりでとても美味しい。 また行きたいパン屋さんです。
グーグルマップの口コミより
美味しいパンがこんな所に❗️ ネーミングで入りました 手作りの釜で美味しいパンを焼いてます 本当に十年前までは製材所やったようで、木がたくさんあるのでパンを焼いてるようです🍞 味わいも良く素敵なお店でした❗️
グーグルマップの口コミより
駐車場とアクセスの目印
店舗には無料駐車場が完備されており、車での来店が便利です。国道158号から奈川へ入り、県道26号を道なりに進むと看板が見えてきます。
【目印の看板】
山道のため運転には注意が必要ですが、到着したときの景色とパンの香りが、その苦労を忘れさせてくれるでしょう。
予約・問い合わせ
人気商品の石窯ピザは予約制
- 電話(0263-79-2212)
- メール(mukaik@azm.janis.or.jp)
向井さんに事前に連絡しておくと確実です。焼き上がり時間を相談できるので、旅の予定に合わせやすいのも嬉しいポイントです。
場所と空気感:奈川という里で息づく「日常」
奈川は、標高のある山里。コンビニまでの距離も長く、暮らしの工夫が日々の知恵に変わる土地柄です。そんな生活圏の真ん中にあるパン屋は、観光地の華やぎとは違う落ち着きがあり、朝の冷たい空気に石窯の温度がじわっと混ざります。
向井さんがるお店は、食卓の主役にも、山歩き帰りの補給にも、等身大で寄り添う存在なんですね。
「元・製材所」であることを掲げる理由
“製材所のパン屋”という率直な名乗りは、この場所の来歴そのもの。木を挽く音が日常だった建物に、いまはパンが焼ける音と香りが重なります。
過去を隠さず引き受ける姿勢は、観光情報よりずっと強い説得力を持ちます。はじめて訪れても、不思議と「ただいま」と言いたくなる温度があるのは、向井亜紀子さんと向井圭子さんの温かな人柄がにじんでいるからでしょう。
姉妹が受け継いだ再生の物語『製材所から石窯へ』
この店の核にあるのは“家族と地域の記憶”です。姉の向井亜紀子さん、妹の向井圭子さんの原点には、父・清さんが営んだ「向井製材」があります。かつては20人規模で地域の林業を支えた現場。
しかし時代の波に抗えず、製材の幕は下りました。そこで終わらせず、次の物語に編み直した——その経緯こそが“ここでパンを焼く”理由です。
「向井製材」の記憶:働く場であり、地域の誇りだった
小学校の帰りに木くずで遊んだこと、雪の日に父がツリーの木を伐ってくれたこと——姉妹の原体験は、地域の製材所が“暮らしの真ん中”だった時代と重なります。仕事場であり、子どもたちの遊び場でもあった場所の空気は、いまの店内にも確かに残っています。
転機の夏:「木の命を燃やしてパンを焼こう」
転機はある夏の気づき。“倉に眠る木材の命を、石窯の火に変えよう”。在庫の材をただ処分するのではなく、食べ物の命に変換するという発想です。
過去と現在をつなぐ一本の線がそこで引かれ、空き工場は“焼きたての香りが満ちる店”へと姿を変えていきました。向井亜紀子さんの直感と行動力が、原点になった瞬間です。
石窯という心臓 手当てを重ね、火と仲直りする
店の中心に据えたのは石窯。火の機嫌に合わせる手間はかかりますが、そのぶん“ふくらみ”や“焼き色”に表情が生まれます。木を扱ってきた家だからこそ、材の乾き具合や火持ちの違いに敏感。炎を読みながら温度の波を料理していく工程そのものが、この店らしさの源になっています。
毎日食べたくなる味へ——パンとピザ、仕込みの哲学
扉を開けると、食事パンから惣菜・菓子までずらり。狙いは一過性の“映え”ではなく、食卓の常連になれる“毎日食べたい味”。東京のベーカリー経験を持つ向井圭子さんが配合と成形を磨き、姉の向井亜紀子さんが石窯の火を調律する。役割分担がクリアだからこそ、種類が多くても味の軸がぶれません。
石窯で焼く約30種のラインナップ
ふんわり系から香ばしいクラスト重視まで、石窯ならではの“水分感×火入れ”で表情を出します。朝一番の棚には、主食に寄り添うハード系と、子どもが手に取りやすい柔らかめが並ぶこともしばしば。食べ進めるほど「次はこれも」と迷わせる構成です。焼成の熱源は製材所の木材。ここにしかない余韻が残ります。
予約制の石窯ピザ『24cm・1,800円の満足』
人気者は直径約24cmの石窯ピザ。定番はマルゲリータとミックスの2種で、外は香ばしく中はしっとり。家族の食卓にも、山旅の〆にも相性抜群です。
予約は電話かメールが確実。持ち帰っても美味しさが続きます。価格も明快で、常連が増えるのも納得ですね。
材料と仕込み:天然酵母の“やさしい”設計
粉と水と酵母の響き合いを大事にし、噛むほどに甘みが増す“やさしい生地”を目指します。食事パンは塩分を立たせすぎず、おかずとバランスする加減。惣菜や菓子は子どもが喜ぶ軽さを意識しつつ、後味に重さを残さない設計です。石窯の熱が芯まで届くからこそ、ふんわり感と香ばしさの両立が叶います。
ドリンクと小さなカフェ体験——一杯の余韻まで設計する
パンと一緒に楽しめるよう、焙煎地にこだわったコーヒーを用意。ホットは350円、夏はアイスドリンク390円と、日常づかいにうれしい価格帯です。屋外のベンチに腰掛けてパンと一緒に味わえば、向井姉妹の心遣いが行き届いた“ちょっとしたカフェ体験”に早変わりします。
Norikura Pioneer Roastersの豆で、澄んだ後味
コーヒー豆は乗鞍高原のロースター「Norikura Pioneer Roasters」。澄んだ後味で、石窯パンの小麦香と干渉せず、むしろ引き立てます。山の水と空気に育まれた一杯は、奈川の風景ともよく馴染みます。パンに合わせてミルク多めにしても、重くならないのが嬉しいところです。
“人が戻ってくる場所”——コミュニティのハブとして
ここはパン屋であり、再会の待ち合わせ場所でもあります。製材所の頃に働いていた人、近隣の大工さん、ふらり旅の人……。棚の前で「お久しぶり」が生まれ、近況が交わされ、次の約束が生まれる。向井亜紀子さんと向井圭子さんの「ただいま」と「いらっしゃい」の距離感が、その空気をつくっています。奈川の“日常”が鮮やかに循環していく感じがします。
接客の温度:丁寧だけど肩の力が抜けている
声の届き方や目線の高さ、会計のテンポ。どれも過剰ではなく、でも素っ気なくもない。パンの説明に迷えば、焼き上がりの時間やおすすめの食べ方を、生活者の目線で教えてくれます。店を出るとき、思わず深呼吸したくなる。そんな後味のよさがリピーターを呼びます。
未来を見据えたサステナブルな取り組み
「製材所のパン屋」は、ただ美味しいパンを提供するだけの場ではありません。建物に残る木のぬくもりを大切にしながら、未来の世代につなげるための工夫を続けています。その代表的な実践が、太陽光発電による店舗運営です。屋根に設置したパネルで電力を賄い、ゼロカーボンを意識した形で店を切り盛りしています。これは単なる環境配慮のアピールではなく、「次にここでパン屋を営む誰かのために、持続可能な形を残しておきたい」という向井亜紀子さんの想いから生まれた取り組みです。
木材の再利用と石窯の火
父の代から受け継がれた木材を無駄にせず、石窯の燃料として命を吹き込む姿勢も、持続可能性の一部です。廃材を再利用する発想は、山あいの暮らしから自然と生まれた知恵でもあります。パンを食べるお客様にとっては「木を燃やす炎で焼かれた特別な一品」という体験になり、環境と食が自然につながる場を体感できるのです。
口コミで広がる「製材所のパン屋」の魅力
実際に訪れた人の感想には「石窯焼きの香ばしさが忘れられない」「奈川の景色と一緒に楽しむパンは格別」といった声が多く見られます。観光客はもちろん、地元の常連さんが通い続けている点も、この店の特徴でしょう。SNSでは、焼きたてのピザや食パンの写真がよく投稿されており、訪れた人が思わずシェアしたくなる魅力を持っていることが分かります。
SNSと公式ブログで最新情報をチェック
営業日や新商品情報は、向井亜紀子さんと向井圭子さんが運営する公式ブログやInstagramなどで発信されています。季節限定のパンやイベント情報も更新されるので、訪問前には一度チェックしておくのがおすすめです。
製材所のパン屋さんの公式ブログはこちら
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シュトーレン2種 予約受付開始しました
詳しくはこちらからhttps://t.co/6WHpG16UpO pic.twitter.com/3aGKDQj480— 製材所のパン屋【公式】 (@seizai_pannya) November 18, 2022
営業時間や休業情報は変動することもあるため、SNSを確認することで「今日はやっているかな?」という不安を解消できます。
訪れる人へのメッセージ
向井亜紀子さんと向井圭子さんが口にする「すぐそばにある食べ物って大事」「訪れた人にとって嬉しい場所になりたい」という言葉は、パン屋を超えた価値を示しています。木材の香りと石窯の炎、そして人と人との温かなやり取り。この三つが重なる空間は、観光地では得られない“暮らしの延長線上にある感動”を味わえる場所です。
心に残る体験を味わいに
製材所時代の思い出が積み重なった建物で、姉妹が心を込めて焼き上げるパン。その一口ごとに、木の温もりと人の想いがしっかりと込められています。山あいの小さなパン屋で過ごす時間は、きっと訪れる人の心にも温かい余韻を残すでしょう。
まとめ:「製材所のパン屋」は物語と味が響き合う特別な場所
長野県松本市・奈川にある「製材所のパン屋」は、父の残した製材所を受け継ぎ、向井亜紀子さんと向井圭子さん姉妹が新たに生み出した奇跡のパン屋です。石窯で焼く多彩なパンやピザ、コミュニティの拠点としての役割、環境に配慮した運営姿勢。そのすべてが重なり合い、訪れる人に唯一無二の体験を提供しています。松本観光や乗鞍方面へ向かう途中に、ぜひ立ち寄ってみてください。きっと心に残る味と物語に出会えるはずです。
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