「選」という漢字から「しんにょう(辶)」を取ると、まったく意味の異なる「巽(そん/たつみ)」という漢字が現れることをご存じでしょうか?
普段なじみのある「選」と、少しマイナーな印象のある「巽」。この2つの漢字は、部首の有無によって意味も使われ方も大きく変わります。
「巽」は苗字としても使われていて私も大阪で勤務していたときに巽さんといった苗字の方とお会いしたことがあります。珍しい苗字だったので話を聞くと奈良に多い苗字と教えてもらった記憶があります。
この記事では、そんな「巽」という漢字について、構造・読み方・意味・由来まで徹底的に解説していきます。「選 しんにょうなし」や「巽 読み方」で検索された方にとって、疑問がクリアになる内容をお届けします。
この記事ではこんな疑問を解決できます。
- 「巽」ってどんな意味があるの?
- 「選」と「巽」の違いは?
- 部首のしんにょうに意味はある?
「巽(そん・たつみ)」の読み方と意味
音読みと訓読みの違いとは?
- 「巽」の音読みは「そん」
- 「巽」の訓読みは「たつみ」
音読みは熟語で使われることが多く、訓読みは単体での意味を強く持ちます。
音読みの「そん」は比較的聞きなれないかもしれませんが、古典や文語で見られる読み方です。
訓読みで「たつみ」と読む場合、方角を意味します。具体的には東南の方向を指しますが、「南東」といった方角よりもやや文化的・歴史的な表現(易経や風水、古典文学などで使われる)として使われています。
「巽(そん)」の使われ方
音読みの「ソン」は、占いや風水などの東洋思想の文脈で使われることが多いです。特に「八卦(はっけ)」という易の図において、「巽」は風を表す卦として登場します。
また、文人名や地名などでも、音読みで「ソン」と読まれる場合があります。ただし一般的には、方角を表す「たつみ」という読み方の方が知られています。
なお、『漢字源(学研)』によれば、「巽」は『謙って従うさま』『風のように流れる性質』などを持ち、古代中国の八卦思想では「風」を意味する重要な卦とされています。
「巽(たつみ)」が示す方角とその由来
「たつみ」とは、東南の方角を指す日本語の古語です。古くは十二支の方位にちなんで、辰(たつ)と巳(み)の間にあることから「巽」と名付けられました。
現代ではあまり聞きなれない表現かもしれませんが、和風建築や庭園の設計、風水などで今も使われています。
八卦における「巽」の意味
中国の易経における「八卦」では、「巽」は風を象徴しています。風は「流れ」や「広がり」を示し、柔軟でありながら影響力のある存在としてとらえられています。
この「風」の性質から、「巽」には「従順さ」「謙虚さ」「柔らかさ」といった意味合いも加わっています。
風との関係についても解説
「巽」は風を意味するだけでなく、風が吹き抜ける方向、つまり東南を表します。風が物事を運ぶように、「巽」は物事の流れや変化を象徴する漢字ともいえます。
風水においても、「巽」は人間関係や金運に関わる重要な方角とされ、特に家の間取りや方位を見る際に注目されることがあります。
「巽」は名前に使える?
「巽」という漢字の意味や読み方を知ると、「これって名前にも使えるのかな?」と気になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは、「巽」が人名や地名としてどのように使われているのかを具体的に見ていきましょう。
人名や地名での用例
「巽」という漢字は、実際に地名や姓としても使われています。たとえば大阪市には「巽町(たつみちょう)」という地名がありますし、「巽(たつみ)」という名字を持つ方も存在します。筆者がお会いした方も苗字として巽を使われている方でした。
人名としても、「巽(たつみ)」や「巽也(たつや)」などの名前に用いられることがあります。意味が良く、字の印象も整っているため、縁起の良い名前として親しまれてきました。
名前 | ふりがな | 職業 | 備考 |
---|---|---|---|
巽 悠衣子 | たつみ ゆいこ | 声優 | 『アマガミSS』絢辻詞役などで知られる |
巽 幸男 | たつみ ゆきお | 医師・医学博士 | 日本の産婦人科学分野で活躍 |
巽 孝之 | たつみ たかゆき | 大学教授・批評家 | 早稲田大学名誉教授。アメリカ文学研究者 |
巽 満里奈 | たつみ まりな | モデル・タレント | 芸名に「巽」を使用 |
縁起やイメージとしての「巽」
「巽」は風や東南という方角、さらには謙虚さや礼儀といった意味を含んでおり、非常に縁起の良い漢字とされています。
また、風が流れを作るように、物事を円滑に進めていくイメージがあるため、名前に取り入れることで「調和」「発展」「前進」などの願いを込める方も少なくありません。
しんにょう(辶)とはどんな部首?
「しんにょう(辶)」の意味としては「道」や「進む」といったニュアンスを持ちます。この「しんにょう」は、漢字に「移動」や「方向性」を与える部首です。
しんにょうを含む代表的な漢字
「しんにょう」は、「辶」とも書き、この部首を含む漢字には、「運」「進」「達」「選」など、動きを示す言葉が多くあります。
見た目では点と曲がりのある線で構成されていて、漢字の右下に配置されるのが特徴です。
「選」以外でしんにょうを外すと別字になる例
「選」のように、しんにょうを取り除くことで別の漢字になる例は他にも存在します。
「運」からしんにょうを取ると「軍(ぐん)」になります。これもまったく異なる意味を持つ漢字で、部首がどれだけ重要な役割を果たしているかがわかります。
まとめ:「巽」という漢字の奥深さ
構造・読み方・意味をふりかえり
「巽」は、「選」からしんにょうを除いた形で現れる漢字で、音読みでは「ソン」、訓読みでは「たつみ」と読みます。
意味は東南の方角を示し、風や柔軟性、謙虚さといった性質を持っています。八卦や風水といった伝統文化の中でも重要な役割を担っている漢字です。
知っておくと楽しい漢字の成り立ち
部首を外すだけで意味がガラリと変わる漢字は、漢字の面白さや奥深さを教えてくれます。「巽」はその好例であり、文化的・歴史的背景まで掘り下げることで、学びや発見の多い漢字だといえるでしょう。
部首によって意味が変わる面白い漢字として「櫆」と「魁」があります。みなさんは鬼辺の漢字ってあまりよくない意味なのかな?と思われるかもしれませんが実はとってもよい意味が込められています。詳しくは「櫆」のきへんなしの漢字「魁」(かい)の意味と名前としての使われ方を徹底解説を読んでみてくださいね。
参考文献・出典
- 『漢字源 改訂第五版』(学研)
- 『康熙字典』(清代 中国)
- 日本姓名語源大辞典(日外アソシエーツ)
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